中勘助「銀の匙」(千夜千冊…第1巻 1 銀色のぬりえ)
千夜千冊で最初に取り上げられているのが、この本。この作品の価値を最初に認めたのは、夏目漱石である 漱石は、この作品は子供の世界の描写としては、未曾有のものであること、その描写がきれいで細かいこと、文章に音楽的ともいうべき妙なる響きがあることなどを絶賛している。
「銀の匙」は大人でなければ書けない文章なのだが、あきらかに子供がその日々の中で感じている言葉だけを使っている。 まるで、子供が大人の言葉の最も子供的な部分を使って描写した織物のようだ。 幼な心そのまま、そこに去来するぎりぎりに結晶化された言葉の綴れ織りなのである。