ノヴァーリス「青い花」(千夜千冊…第1巻 4.声が出る絵本)
ドイツロマン派のノヴァーリスは鉱山技師で、28歳の若さで病没している。
暗い森を抜けていけば出会える幻想の象徴があるとしたら、それが「青い花」 作品のどこまでが夢で、どこが地の描写ということがはっきりしないまま読むことになる。文体は次第に透明になっていき、夢と現実の境界に溝がなくなっていく。
ハイネは「どんな生命をも鉱物的結晶にしてしまう、妖しいアラビアの魔術師」と言っている。 あらゆる石が歌をうたい、木々が古代文字になっている物語だ。
ノヴァーリスの断想は、鋭いひらめきと豊かな着想に特徴がある。 人間を小宇宙とみなし、また世界をひとりの人間としてとらえ、そこに宇宙の根源の力としての心情がはたらいているとする考えがこめられている。 当時の最先端をいく科学的知見を縦横に駆使したファンタジー世界の壮大さと華麗さにおどろかさざるをえない さらに解説から引用させてもらうと、、、。
未知のもの、無限へのあこがれを象徴する青い花は、ドイツロマン主義の象徴にとどまらず、現代のますます複雑化する社会で、名もなく小さな存在に過ぎない個人に、自己の心情によりどころを求めるようにと、素朴で力強いメッセージを送っている、、。 様々の次元が複合した、壮大な万華鏡をなす未完のこの小説は、そこで語られる比喩の形象から、時代をこえて大きな説得力をもっていると思われる。