豊田空間デザイン室

建築ノート
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『いろり…2』

updated: 2009年1月18日

いろりの意味するところは、人の居所、あるいは火処(ひどころ)を表す。ここでは炊事、乾燥、採暖、照明のほかに行事や儀式も行われていた。いろりの火を建築以来絶やしたことがない里もあるように、火種を保存する大切な場所であった。

 
いろりのある部屋は「じょい」(常居)「茶の間」「だいどこ」「いどこ」などと呼ばれる集まり部屋、今で言うダイニングキッチンにあたる食事と団欒、近隣との交際にも使われる広間である。
座席の位置も決まっていたそうだ  上座は主人の席で、座敷を背にして土間に向って座る。家人、雇い人を監督し、家畜の動静にも目の届き易い位置である。畳かござが横にしかれるので「横座」と呼ばれた。客人を入口近い下座に据えるのは現代の作法とは違うが、主人は家屋敷の守護神の司祭である伝習である。自分の親でさえ隠居すれば譲らず、横に並べて座らす。

第二位の席は奥の勝手に近い場所で、戸口のほうに向って座る主婦の座。北側になることが多いので「北座」ともいわれる。 そしてこの座には、祖母や娘も並んで座る。   食事の給仕をする場所なので、食(け)にちなんで、「けざ」「けどこ「けんざ」「けぐらざ」など多くの呼び名がある  農家の主婦は夫ともに重要な農事を行い、食物の配分など家事の主宰者なので、座は低くなかったのである。

第三位は外来の「客座」。客がいないときは家長以外の男の席なので「男座」ともいわれる。また「北座」に対して「南座」「向こう座」などともいう。 そして横座と向かい合った土間際の席が「下座」「木尻」の名で呼ばれる末席で、雇い人、出入のものの席である。また、若い嫁や子供、猫もここにすわるので「嫁座敷」「こいど」「猫の間」ともいう
 いろりの座は、封建的な上下関係や主従制度からつくりあげられている家の秩序であった。  が、日常生活にとっても合理的な位置づけでもある。 現代の生活で標準的に配置されるキッチン、ダイニング、リビングについて一考する意味があるのではないだろうか。