豊田空間デザイン室

建築ノート
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『サヴォワ邸②』

updated: 2008年9月17日

サヴォワ邸の続き
 コルビュジェはスイスの雪深い山村に育ったためか、光あふれる土地に強い憧れを抱いていた。そして若い頃、地中海を旅している。その時に描いたスケッチ(MOLESKINEに描いている)は力強く、並々ならぬ才能が感じられるし、それらの建造物は、生涯影響を与えているようだ。
 その時の印象を「光と材質を配慮することによって、まるで自然に空につながり、自然に地に繋がる」と言っている。
 サヴォワ邸が建った頃は、まさに「エコール・ド・パリ」、新しい機械文明の時代に、芸術家たちは不安を抱え、カフェに集まっていた。そして、週末この別荘に集まり、安らぎを覚えていたのであろう。ここは、石を組積した壁構造の重々しい建物に比べて、明るく開放的な空間というだけの、単純な住宅ではない。闇のようなところや、色やタイルの使い方などは遺跡のようでもある。そして路地を感じられるし、地中海の街を散策するようでもある。
 人間が人間らしく生きていた、ヨーロッパ文明の精神的な原風景を、ここに重ね合わせようとしていたのであろう。さらに、コルビュジェ次のように言っている。
 「建築の伝統に背を向けることでも、地域的な繋がりを破壊することでもなく、私は人間のための母なる家を、人間の家を求めていこう」