豊田空間デザイン室

建築ノート
archive

『ファンズワース邸』-2

updated: 2008年10月5日

ミースは、石造りの建築では出来なかった開放的な空間を作ることが狙いであったといえるし、ガラスを通して自然の魅力を見つめなおしたと思う。
 ファンズワース邸のプランは極めてシンプル。家の中心に動かすことが難しい水道・ガス菅・エアコン等を集約しその周りに仕切りの無いワンルーム空間を作り出している。家具の置き場所を変えれば、書斎になったり、リビングになったりという風に、住み手が生活に合せて自由に出来る空間。所謂、ユニバーサルスペースである  また、考え方だけでなく、温水式床暖房やエアコンを完備し、今でも十分通用するようなシステムキッチン等、機能的にも斬新である。外部に面した明るいキッチンやダイニング等、50年以上前に作られたのは驚異である
 「建築とは時代を翻訳することである」とミースは言う。レイクショア・ドライブ・アパートメントを始めとして、シカゴに高層ビルを数十件建てているし、高層ビルの生みの親でもあるが、私はこの住宅が一番好きである
 話は発展するが、ファンズワース邸を遡ること30年、「バルセロナパビリオン」の伸びやかでリニアな壁とガラスの構成のプロポーションは、比類の無い美しさである。
 「レス・イズ・モア」というミース。足し算的な物の考え方の西洋に対して、マイナスを極めていくことにより美を見出す日本人の感性。   そして、フレームによるフレキシブルな空間構成と高床など、日本の建築との類似性については、何れ考察したい