「さらば愛しき人よ」(千夜千冊…第1巻 7.行きずりの日々)
ハメット(マルタの鷹の作家)を信奉するチャンドラーは、中年になってから創作活動に足を踏み入れたpencil 解説にもあるが、新鮮な文体、きびきびした話法、徹底したリアリズムが特徴だ。 貧乏だが、やたらにダンディで、女と友情に弱い私立探偵フィリップ・マーロウに、その昔、「アメリカ」を感じた覚えがある。
千夜千冊にもあるが、大鹿マロイという魅力的な犯罪者と、それよりさらに蠱惑的(←人の心をひきつけ、惑わすこと)な悪女の見本のようなヴェルマをふんだんに登場させた本書。この二人にマーロウが絡む小気味のよい加速感と倦怠感の切れ味は絶品。
1930年代のロスアンジェルスと、その周辺の風景描写に思いを馳せながら、久しぶりに読んだ。