豊田空間デザイン室

建築ノート
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『日本の民家…草屋根』

updated: 2008年10月18日

しばらく海外の住宅について考えたので、今回は日本へ。
 日本の民家の屋根の始まりは、草屋根、、、軽くて、夏涼しく、冬は暖かく、雨音もしないなどの住み心地の利点があった。  材料は湖萱(うみがや)という<よし>が最上で、次は山地に生える<薄(すすき)>。他には、小麦藁、桑の小枝、楮(こうぞ)の蒸しがら、麻の皮を採った後の苧殻(おがら)、杉の屑皮、細い篠竹、笹の葉といったように様々な材料が使われたそうだ。
 これらは、何かの役に立った後の屑物で、屑屋の語源はこれらの屑物を利用した粗末な屋根という意味だったらしい  葺き方には逆葺、苫葺、段葺などがある。
 そして、棟は最も原始的な棟覆いが草棟と言われる。これはへの字型に折り曲げた折茅を被せ、さらに杉皮を重ねて防水をした上に芝土を置くやり方だである いわば、植物の根をはびこらせて、棟回りを固め雨漏りを防ごうというものだ。東国では棟仕舞い全般を「ぐし」、芝棟は「くれぐし」という。土塊(つちくれ)を用いた棟の意味だそうだ。
 もう一つは、笄棟(こうがいむね)で、中部地方北部に見られる。棟木の下端近く、屋根を差しつらぬいて水平の横木を叉首(さす)に取り付ける。この横木は両側に縄をくくりつけ、棟が飛ばないように工夫されている。
 この横木は婦人の髷に挿した「笄」に似ているところからこの名があるそうだ  雄大なのは飛騨白川の合掌造りのもので、棟積茅をうず高く積み上げ、その先を切りそろえない棟がたちなので「浪人髷のぶっさばき」とか「石川五右衛門の百日鬘(かつら)」とか表現される。屋根の棟の形を人の髷や鬘に見立てるのは、日本独特の何と粋な感性だろう