豊田空間デザイン室

建築ノート
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『農家の土間』

updated: 2009年2月15日

 農家の入口を入るとほの暗い中に広い土間の拡がりが見える。夏でもひんやりとした涼しさを感じさせるところもある。 土間は入口、炊事に使われるほか、農作業や藁打ち、縄綯いなどの手仕事も行われた。そしてそれに必要な道具類の置場として、また米や味噌などの食料の調整や貯蔵の場所として使用されている。     このように一応生活全てが賄える設備があって、大昔の土間だけの住まいの伝統を今に引き継いでいると言える
 水の豊かな水田地帯の土間は、しっとりとした湿りがあり、美しく整頓されている。元々は履物はすべて外で脱ぎ、土間では上履きの藁草履を用いていた。 土間の床は山土に石灰とにがりを加えて叩き固めたもので、寝所以上にきれいに掃き清められている。
 土間のかまどには荒神様やかまど神、ながしには水神様、えびす、大黒をはじめ、もろもろの神の座がある。  正規に信仰する神棚や仏壇は座敷にあるが、その他の土俗的な信仰の対象はすべて、土間に鎮座している。人々は土間に対して一種の神聖な思いを抱いていたのが興味深いことである。