豊田空間デザイン室

建築ノート
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『ルイス・バラガン邸』

updated: 2010年1月16日

このところ、日本の民家のことが続いたが、趣を変えて「ルイス・バラガン邸」について考えてみたい。
 ルイス・バラガンはヨーロッパでは鉄とガラスのインターナショナル・スタイルの建築を学んでいる。 が、機能主義で空間との対話が無く、新しいフォルムの冒険も無く、メキシコの風土にはそぐわないと、疑問を持ち始める。  日常の生活は、単なるガラスの箱のような住宅で営まれるべきではない、と思う。  「光」にこだわったバラガン、、建築家でなければ哲学者になっていたかもしれない彼は、自宅の半地下室で、午前は読書、午後は明るい日差しの入るリビングで過ごしたそうだ。 また、特に庭を大切にし、刻々と変る光を住宅にどう取り込めばいいかを考えた。 庭は光を放つ装置でもあるのだ。 そして、メキシコのテクスチャーの色を出すために、何度も手を入れている。日本では使わないような、原色のピンク、黄色、オレンジ、、など等。 しかし、その建築は静けさに満ち溢れた静謐な空間である。 建築家も、自らのノスタルジーの啓示に耳を澄ませてみるべきだと言う。
 バラガンの魅力は、20世紀の近代建築が否定してきた風土や原風景を、普遍的な空間に昇華させたことではないかと思う。

 昨年の秋、ワタリウム美術館で自邸の一部を再現した展覧会があり、観に行ったのだが、やはり東京の限られた建物の中では、「光」は感じられなかったのは残念である。